by Gemb
ベースキット
	リリースから、かれこれ40年位になるのか? 　デカール換えやら、レジンパーツを付けたりと、実機はとっくに退役したけれど、再販・休止を繰り返し、これでもかというくらいに稼がされている息の長〜いキットですね。 　今の目から見れば、合いは悪いし、バリも目立ちますが、プロポーションは良好で、リベットもさりげなく打たれていて、最近流行の凹のリベットに比べると遙かにグット。 　今回はNMCブランドになってからの２弾目ということで、我が海上自衛隊のJ型にコンバートします。 　このキットのリリース時に「なんで『J』じゃないのよ？」と思われたあなた、やっと「J」が作れます。
資　料
	使用した資料です。 　やはり何と言っても世傑 No.50。　国産機である P-2J のモノグラフはやはり日本にしかないのです。 　それと 1994/9月号のモデルアート。 　P-2J の改造記事が載っていて、アンテナ位置など細部を知りたい時に便利です。 　当時この特集を見て勇猛果敢にチャレンジした猛者もいたが、殆どが撤退を余儀なくされたと聞いてます。
ベースキットの加工 - 1
	まずはベースキットを切り刻んでやります。 　マスキングテープを境界に貼って、そこから１ミリくらい内側を切断。 　切断にはレザーソーを使っていますが、カナノコの歯でも充分間に合います。
ベースキットの加工 - 2
	コの字型に切り抜く時は、両脇をノコで切断し、奥はカッターナイフで3〜4回ほどなぞってから折り曲げると、簡単に切り取れます。 なお、カッターナイフを使う時は横着せずに、定規を当てること。
ベースキットの加工 - 3
	上が切断した直後の状態で、下がパーツと合わせながら削り込んだものです。
レジンパーツの加工−１
	問い合わせがあった湯口の処理について、私のやり方をご紹介します。 　まず、出来るだけナイフで不要部分を切り取っておきます。 　これによって後工程のサンディングが楽になります。
レジンパーツの加工−２
	その後、粗めのヤスリで湯口を削ります。 　私は#120 の耐水ペーパーを角材に貼って使っています。 　水をつけて削ると研磨粉が飛ばずに健康に良いです。 （ただ、机の上がドロドロになったりしますが）
レジンパーツの加工−３
	面の角度に注意しながら削っていくと、画像のような湯口周りの余分な箇所が削りカスとして取れてきますので、そこで研磨終了となります。 　この方法はバQの切り出しとほぼ同じ感じですね。
レジンパーツの加工−４
	全体を整えるとこんな感じになって、削りだせます。
レジンパーツの加工−５
	いくら注意深く面を出そうとしても、研磨面はビミョーな凸面になっていて、パーツを合わせると隙間が出来てしまいます。 　そこで、キサゲを使って面の中央だけを薄皮をはぐように削ります。 　そうすると周囲の面だけが残り、中央部は凹んでちょうど良い塩梅になります。 　キサゲはパーティングラインを削ったり、消えかかったスジ彫りを彫り直すのにも使え、持っているとけっこう重宝しますヨ。
パーツを合わせてみる
	で、出来上がったものを合わせてみます。 　前方ナセルの境目が若干出っ張るので少し削っています。（矢印部分）
パーツ
	前後しますが、切り出したパーツ。 　黒く斑点状に見えるのは瞬着パテの跡。　ウチに来るのは売り物にならないジャンクパーツばかりなので。 　でも皆さんの所へはもっとチャンとしたものが行くはず。
スジ彫り
	ベースキットをスジ彫りします。　キレイに打たれたリベットを削り取るのは忍びないのですが、レジンパーツがスジ彫りなので、しょうがありませんね。 　で、スジ彫りの道具はこんなところ。 　定規の下にあるのがコンクリート針、コンクリートやタイルも刺し通す硬い針で、ケガキ針代わりに使ってます。 　点検口などはプラ板でテンプレを作っておくと便利で且つ失敗が少ないです。 　要はズボラを決めて既製のテンプレを使い回したりすると却って失敗し、余計な時間がかかるということ。 　定規も然り、面倒がってフリーハンドでやると必ず失敗します。 　チョット手間ですがチャンと定規を使ったり、作ってやると結局失敗も少なく、時間のロスもなくなるモンです。 　曲面はマスキングテープ２枚重ねで定規を作り、エッチングノコでスジ彫りしてます。
エンジンナセルの組み込み
	組み立てたエンジンナセルを上翼へ組み込みます。　前縁を合わせるようにすると、後の翼上面の摺り合わせが楽です。
主翼下面の接着
	キットの主翼は飛行時のように上側へ変形しているので、角材などを当てて下翼を接着します。
上反角が不足してしまった
	上のように反りを修正したためか、上半角が不足してしまったので、内外翼の境界でレザーソーで切れ込みを入れ、上半角をつけました。 　下翼をうまく調整しながら接着すればこの様なことにはならないかも知れません。
補強板の取付け
	改造キットには補強板用のプラシートが入っています。 　これを平面図を参照して同じ形に切り出し、所定の位置に瞬着で接着しておきます。 　接着後、角を落とすため紙ヤスリでひと舐めしておきます。
胴体を接着する前に
	胴体を接着する前に、色々やることがあります。 　まず、ESMアンテナを改造キット付属の小さなものに取り換えるため、キットのレドームを削り取るので、それ用のバックアップとしてエポキシパテを仕込んでおきます。 　接着面はツライチに仕上げておきます。
バブルウィンドウを接着
	改造キット付属のバブルウィンドウを切り出し、エポキシ接着剤で胴体に接着します。 　切り出す際は慎重に、窓枠にはキツキツくらいがよいです。 （だけど、自衛隊ってバブルウィンドウが好きですね、殆ど例外なく自衛隊機には付いてるでしょ？）
追加の窓をあける
	あと、中央近辺に新たに窓が設けられていますので、それも明けておき、ベースキットの透明パーツを代用として付けておきます。
胴体を接着
	ベースキットの左右胴体を接着します。 　仮組みの撮影に使われたので機首部が既に切り取られていますが、機首は接着後に切り離します。 　それにしても、これだけゴムバンドを巻いたのは久しぶり。 　なお、窓はこの時点でゾルやテープでマスキングしておきましょう。
補強しておきましょう
	ベースキットの左右胴体を接着面積がちょっと心許ないので、主翼が付く所だけ補強しておきましょう。 　短冊状のプラ材を接着線の上に裏当てしておきます。 　画像は下面を写してますが、上面も同様に補強します。
出来上がった胴体
	こんな感じです。 　パテだらけですね。（笑） 　ESMアンテナのレドームも削り取ってあります。
スジ彫りの再生
	パテ盛りで消えたスジ彫りを彫り直しています。 　やはり同じように、私は二枚重ねのマスキングテープをガイドにして、エッチングノコを使ってます。
キットのコックピットはこんなもの
	コックピットはそのままではこんなものです。　何ともさみしい限り。 　で、究極のスクラッチと行きたいところですが、時間との関係でチョトだけ手をいれます。方針としては・・・ ・シートを作り替え ・サイドコンソールを追加 ・操縦桿を追加 　といったところです。　あと、計器板はデカールが入ってますので、それをマンマ使用。
シートです
	キットのシートに手を入れます。 　ヘッドレストを独立させ、バックシートとシートをそれらしく削り込んで、肘掛けをプラ材で追加し、薄い鉛板でシートベルトを追加。 　それだけでもまぁまぁのデキになります（か？）。
操縦桿です
	P-2の操縦桿は昔ながらの半円形のもの。　色々作り方はあると思いますが、こんなやり方はどうでしょうか。 ・銅線を楊枝にコイル状に巻き付ける ・楊枝を抜いて円の1/3程をカット ・プラ材でスポークやスティックなど作って組み付ける
出来上がったコックピット
	以上で出来上がったコックピットです。 　サイドコンソールやシートの後ろに電子装置（らしき）を追加しでいます。
機首見張り員席
	機首見張り員席は資料を参照して、右側にはテーブルとダクト、得体の知れない箱類。左側にはサーチライトのコントロールスティックなどをそれらしくデッチアップ。 　窓は上1/3程をクリアグリーン（一説ではクリアブルー）で塗っておきます。
穴が大きすぎ
	アストロハッチの穴が左側だけ大きすぎなのでシムをかましてます。 　まず、左側をいったんプラ板でふさぎ、天測窓に合わせてヤスリで削ります。
前部胴体
	改造キットの前部胴体に組込み、瞬着を流し込んで接着します。 　っと！　オモリを忘れずに入れて下さいネ。 （もし忘れた時は、レドームの所に穴をあけ、エポキシ接着剤でベトベトにしたオモリを前の方に放り込んでやりましょう）
機首見張り員席のカゴ
	機首見張り員席にはカゴが設けられ、ベースキットにも、らしきものがパーツとして入っていますが、とても使いものになりません。 　そこで、ほんのチョット手を入れてみます。 　洋白線でカゴの周囲に枠を組み、機首に接着時にステーを付けるだけで、グッとそれらしくなりました（かな？）。
ベースキットと合体
	キャノピーはベースキットのものを使いましたが、レジンキットとの合いが悪い、というか、元々ベースキットとの合いも悪いのですが、よく削り合わせを行います。 　それでも隙間が空くときは溶きパテを流し込んでやります。 　知り合いからの情報によると、FALCON のクリアバックスキャノピーに P2 用があるので、それを使うとグッと良くなるでしょう。 （透明度が上がる分、機内はもっと手を入れなければなりませんが） 　ベースキットに組み込む時は機体の中心線が一直線になるように充分注意して下さい。 　合わせ目はパテを盛って摺り合わせます。
サフ吹きと白塗り
	全体にサフを吹いてキズや段差のチェックをします。 　その後上面の白を塗るためクレオスのベースホワイトを吹いた後、C316(FS17875)を吹きます。 　今回、スーパー透けるデカールを使用するため、日の丸とウォークウェイ部も白を吹いておきます。
これぞ新兵器サークルカッター
	日の丸の下地用マスキングシートを作ります。 　よく分からないかも知れませんが、ディバイダーを改造したサークルカッターを使ってます。 　ディバイダーの針の反対側を研いで切り出しナイフ状にしてあります。 　サークルカッターとして使う時は針を逆に差し込み、ディバイダーと兼用で使えるスグレ物（死語か?）です。
マスキング
	グレーを吹く前にウォークウェイをマスキングしておきます。 　使用したのはAIZUのミクロンマスキングテープの0.4ミリ 　もちろんベースキット付属のデカールを使っても OK です
翼　端　燈
	延ばしランナーを加工して翼端燈を作っておきます。 　本来なら透明プラ材を使うのがスジなのですが、時間の関係で不透明プラ材を使いました。 （あとで銀に赤や緑を混ぜたものを塗って誤魔化します）
グレーを塗る
	指定色はFS16081エンジングレー。　一ケタ目が１はツヤ有りなので、あとで半艶でオーバーコートします。 　マスキングした境目は#1500のペーパーで軽くサンディングしておきます。
このプロペラは大変！
	このプロペラの塗りは死にます。　白、グレー、銀、黒、赤の順に塗るのですが、その都度マスキングをして、オマケに最後の赤は上下の境界をマスキングしなければなりません。
改造キットのデカール
	改造キットには白とカラー版の２つのデカールが付属します。 　白を下に張ったあと、カラーをその上に重ねて貼りますがズレもなく若干ジャギーが出ていますが、発色もマァマァではないでしょうか。 　少なくともベースキット付属のデカールより隠蔽力はあるので、「海上自衛隊」のロゴだけでも追加して欲しいところです。
ウォークウェイ
	胴体上面のウォークウェイはインクジェットプリンター用のデカールを使って作りました。 　腕に自信のある方は塗りでいってください。 　他にインレタという手も有りです。　要は楽にキレイに出来るものを考える、ということですネ。 　天測窓外周の円がチョット大きすぎ
アンテナ類を追加
	胴体上・下面には各種ブレードアンテナが取り付けられていますので、付属の図面を参照してプラ板で再現します。 　これらもパーツとして入れて欲しかったところですが、変にバリっだらけのパーツを加工するより自分で作ってしまった方が楽かも知れません。
ついでにアンテナ線
	アンテナ線の取付は、まず尾翼部分をピンバイスで貫通孔を明け、胴体上面側もピンバイスで孔をあけておきます。 　次に尾翼側にナイロンテグスを通し、瞬着で固定。　胴体はテグスを引っ張るようにしてテンションをかけながら孔に入れ、延ばしランナーと瞬着で栓をします。
コマゴマしたもの
	改造キットに排気パイプ付属しています。 　また、垂直尾翼にはループアンテナが付きますので、これも操縦桿と同じ要領で真鍮線から作っています。 　ワイパーは延ばしランナーとプラ材でキャノピー前面に貼り付けていますが、接着剤で汚さないように注意してください。　 　ワイパーを入れるとウィンドシールドがグッと締まった感じになります。
完成です！
	ということで、完成です。 　この改造キットはメーカーが言うほど簡単ではありませんが、それでも海外の簡易インジェクションや、一昔前の「取り柄はプロポーションだけ」というような何クセもあるキットを作ったことがある方ならそれほど困難なことはないと思います。 　P-2J は P-2V を元に、日本人の繊細なセンスで作り上げた大変スマートな機体です。是非チャレンジされることをお薦めします。